杞憂
「滑稽じゃないですか」
土方さんの眉が疑問を呈するように眉間に寄る。その様がセクシーだと感じた自分の感情の場違い感に笑みが漏れそうになったけど、それが表に出ることは一ミリもなかった。
いくら子孫相続、種を絶やさない為の生殖行為だという大義名分があったところで、欲望のまま二人して腰を揺らす様は客観視してなんて馬鹿げているんだか。
加えて俺たちにはその大義名分すら成り立たない。こんなに莫迦なことが他にありますか。
つらつら喋る俺の言葉を一言一句も土方さんが聞き漏らさないことは分かっていた。だから話した。思案に耽る表情で煙草を銜えなおした土方さんの座る布団の上で、理性を脱ぎ捨てた自分たちがむさ苦しく交わる姿が見えるような心地がした。
途端に幾許かの不安がまた感情を食い荒らさんばかりに襲ってくる。人間は誰だって全てを曝すのをこわがった。
愛する人ならば、なおさら。
「そうかもな」
まずそう言って一旦紫煙を燻らせてから、
「でも俺はてめーのこと、綺麗だと思っていつも見てるけど」
鬼と呼ばれる男は女心は読めない癖に男心は読めるのかと言えばちげーよおめーだからだよと返される。自然上がる口角と漏れ出す笑みを抑え切れずに顔を崩せば、穏やかな笑みで引き寄せられた。長い指で髪を梳かれる。
「あのね、土方さん、好きですぜ」