終わったら

「お兄ちゃん、好き」

安心しきったからだった。
全部じゃないがある程度片付いて、全員に休暇がもらえて、やっと張り詰めさせていた糸が切れたような感覚がして、安心の一番の理由を生む相手を目の前に酔っ払って、口から出た言葉。ふたりきりだからこそ出た言葉。
それにカラン、と氷が擦れる音がやけに響いて、兄が黙ったことを知る。
上目に見遣って恐らく紅い顔で、打算的に、昔と同じ瞳を意識して見つめた。
無防備に程がある甘えを晒け出し、返事を待つ。

兄がグラスを置いて近づいてくるのを、心音を聴きながら待っていた。