それがまたライク・ツーの状態で見た夢だったので最悪だった。
「あああああああああーーーーー!!!!!!!!!!!」
最初の音以外は何とか理性を働かせて枕に吸い込ませたが、気付かれる奴には気付かれたかもしれない。でもそんなことはどうでもいい。いつも通り過ごしていれば気のせいとして流される程度の声量だ、と思う多分。幸か不幸か悪夢に魘される奴は此処には割といる。
(つってもこんな悪夢はそうそう見ねぇ……見て堪るか……何で見た……くそっ……)
すぐ忘れればいいのに求めている姿がそこにいる映像はたとえ幻だとしても心に焼き付いて離れない。だって僕お兄ちゃん大好きだし!!!!! こんなこと絶対一生誰にも聞かせないし口にも絶対出さないけど!!!!! 脳内だから開き直っていいよね!!!! もう!!!!!!
長い長い溜息を吐く。幸い今日は休みの日だ。二度寝をしていたって不思議じゃないし問題もない。ほんとに予定がない日で良かった。もしマスターや他の奴らに呼ばれても緊急でない限りてきとうに答えて断ろう。それくらいショックで誰とも顔を合わせたくない。……まともに普段通りにできるか何時になく自信がない。
(あれでも大事な兄だから、好きな兄だから、無事でいるかどうか確認したいし、もう一度会って話したい、って感情のはずだったけど)
自分にも吐いていた嘘を夢に暴かれた。最悪の気分だ。そうだ忘れてた。思い出さないようにしていただけだ。兄に対するもう一つの好意を。欲情を。
「〜〜〜〜〜っ、さいっあく…………」
大体お兄ちゃんはあんな酷いことしないし。その他大勢のてきとうな人間にはしてたかもしれないけど、弟である僕にそんなことしたこと一度もなかったし。焦れったいくらいいつも優しくて……宝石かなんか触るみたいにして慎重に触って……いや何思い出してるの。忘れてたのに。馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿。
――綺麗だ、と。肌やカラダを褒められるのが好きだった。
「だっっっっから思い出すなっつの!!!」
思わず声を張り上げてしまった。これは流石に怪しまれるかもしれない。もういい。今日は一日中引きこもってよう。マスターやジョージや十手辺りに心配されるかもしれないけど関係ない。あとのことは明日の「俺」に任せる。僕はもう寝る。夢のせいで頭の中がぐちゃぐちゃだ。
欲求不満。その四文字が脳裏を巡る。
それもこれも行方知れずの兄が悪い。責任転嫁して、二度目の眠りに強引に就いた。