これから知っていくこと

グラースの機嫌が良い。それをタバティエールは良いことだと思っていた。今日は珍しく湿度も低くカラリとした晴天で、シャスポーの機嫌も悪くない。こりゃ穏やかな午後が過ごせそうだな、と、午前の授業を終えた彼は厨房に立つ予定か買い出しに行く予定かを立てていた。上機嫌ついでに談話室でグラースに声をかける。一緒に街を買い物がてら巡り歩くのも良いと思った。所謂デートとして。だから声をかけて気になる話題を振ったのだ。やけに機嫌が良いがどうしたのかと。グラースは機嫌の良いまま答えた。
「ああ、それな。昨日馴染みの通りを歩いていたら言われたんだよ。『最近グッと綺麗になったな』って。いつもそうだろ、って言ったらよ、前よりずっと綺麗になったんだって返されてさ、僕が見目麗しいのは当然のことだけど改めて褒められるのも悪くない気分だなって」
今日はよく晴れた晴天の日である。気温も穏やかで過ごしやすく吹く風も爽やかだ。座りながら話すグラースの横顔も陽光を受けキラキラと輝いている。和やかな談話室の空気にタバティエールの一声が落ちる。

「あ゙?」

目を丸くするグラースはほとんど聞いたことのない彼の低すぎる声の理由が解らない。きょとんとしてどうしたんだ? と首を傾げている。グラースはまだ知らないが、先日初めてグラースの身体を暴いた想い人の彼は、グラースの想像する以上にずっと愛おしい恋人のことを愛している。