さて、そんなわけでおよそ七年前の過去へ行って左門くんのルーツを知った。その始めの始めのきっかけは厳密に言えば幼き左門くんの純粋な願いからだろうし、もっといえば左門くんの家柄からだろう。それでも私が目の前で見たものとネビロスさんの話を合わせれば現在の左門くんを形作ったきっかけはアンリさん、地獄最強の悪神アンリ・マユであることは疑いの余地がない。つまりここ最近始まった私の常日頃のいらない苦労はアンリさんが元凶の一端を担っていることになるが、だからといって私はアンリさんを責める気なんてこれっぽっちも湧いてこない。左門くんが私を標的にしたのは左門くんの好みが原因だし、そもそも左門くんがカスじゃなきゃこうなってないし。左門くんが召喚術士として強かったおかげで助かったことも何度かあるし、それに今の賑やかな日々をそれほど悪くないと感じている。だから左門くんの過去を知ったところでこれから特に変わることはないのだ。精々左門くんを弄るネタが増えたくらいだろうか。勝手に過去を見てしまったこと怒られて反省しているから奥の手として普段は封印することにしておくけど。
だから何も変わらないのだけどなんだろう、私の左門くんを見る目が少し変わった。
あんなに幼くて純粋な頃を知ったのもあるし召喚術にのめりこむ理由を知ったのもあるしアンリさんへの思いを知ったのもあるし実際にお姉さんと呼ばれたのもある。輪を見ている時のような気持ちになった。左門くんがとてもいじらしくて構ってやりたくなり優しくしてやりたくなる弟のような存在に見える。実際そんな可愛いものじゃないことは知ってるけど、でも、だから、ついアラアラウフフな反応にもなる。そう見えてしまうのだから。
「天使ヶ原さんその目やめてくんない」
「え、どの目?」